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相続時精算課税制度と暦年贈与の違い|併用することはできる?

効果的な相続税対策の一つに生前贈与という方法があります。

しかし、贈与税の課税方式には「相続時精算課税制度」と「暦年贈与」という2つの制度があり、その違いや特徴、活用方法は複雑な部分もあります。

本稿では、これら2つの制度の相違点や活用法、併用の可能性について解説します。

相続時精算課税制度とは

この制度は、生前贈与と相続を一体化して課税する仕組みです。

贈与時に贈与財産に対して一定の贈与税を納付し、相続時に贈与財産と相続財産を合算して相続税額を計算します。

暦年贈与とは

毎年11日から1231日までの期間で、110万円以下の贈与であれば贈与税が課税されない制度です。

この110万円の基礎控除額を超えた部分に対しては贈与税が課されます。

相続時精算課税制度と暦年贈与の違い

両制度の主な違いは以下の通りです。

非課税枠の大きさ

両制度とも、一定の非課税枠が存在しますが、その額は違います。

 

相続時精算課税制度:毎年110万円(相続時精算課税に係る基礎控除額)

相続時精算課税に係る基礎控除額は、令和6年以降の贈与から適用されます。

令和5年以前の贈与には、基礎控除額はありません。

110万円を超える贈与額のうち、累計2,500万円までは贈与税の支払いはありませんが、将来、相続税の計算に取り込まれます。

相続時精算課税に係る基礎控除額は、将来ともに相続税の計算に取り込まれません。

 

暦年贈与:毎年110万円(暦年贈与に係る基礎控除額)

相続開始前7年前までの贈与は、暦年贈与に係る基礎控除額部分を含め、相続税の計算に取り込まれます。(47年前の贈与は、合計100万円を超える贈与に限ります。)

 

どちらも、年間の基礎控除は110万円であり、基礎控除部分の取り戻しは相続時精算課税はナシ、暦年贈与は7年間はアリなので、一見、相続時精算課税が有利にみえますが、そう単純ではありません。相続時精算課税は110万円を超える贈与は、全て相続税の計算に取り込まれるため、相続財産が高額な場合、相続税の実効税率を下げることはできません。

これに対し、暦年贈与は、例えば200万円の贈与で、贈与税9万円を納付すれば、7年の期間制限に該当しない限り、相続税の実効税率を下げることが可能です。

税率の違い

非課税額を超えた部分には税金が課されますが、その税金には違いがあります。

 

相続時精算課税制度:相続時精算課税に係る基礎控除額を超える贈与の累計2,500万円までは、贈与税0円、2500万円を超える部分に対して一律20%。ただし、基礎控除額を超える贈与は将来、相続税の計算に取り込まれ、過不足は清算されます。一旦20%を納めるものの、清算されますので、仮納付ともいえます。

 

暦年贈与:基礎控除額を超える部分に対して10%55%の累進課税

 

相続時精算課税制度は税率が一定なので、高額の贈与でも税負担が簡単に分かる一方、暦年贈与は贈与額が大きくなるほど税率が上がります。

年齢制限

制度を利用できる年齢にも違いがあります。

 

相続時精算課税制度:原則として贈与者60歳以上、受贈者18歳以上(直系卑属に限る)

暦年贈与:年齢制限なし

 

相続時精算課税制度は世代間の財産移転を促進する目的もあるため年齢制限がありますが、暦年贈与には年齢の制限はありません。

相続時精算課税制度と暦年贈与は併用できるか

同一の贈与者から同一の受贈者への贈与では、両制度の併用はできません。

どちらか一方を選ぶ必要があります。

まとめ

今回は、相続時精算課税制度と暦年贈与について解説しました。

相続時精算課税制度と暦年贈与には、それぞれ特徴があるので、自身の状況や目的に合わせて適切な方法を選択することが重要です。

財産の種類や金額、家族構成などを考慮し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、最適な相続税対策を立てることをおすすめします。

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    • 昭和38年 3月 木更津市にて出生(現在も居住)
    • 昭和56年 3月 君津商業高校卒業
    • 昭和56年 4月 東京会計専門学校入学
    • 昭和56年 6月 日商簿記1級合格
    • 昭和58年 8月 税理士試験合格
    • 昭和59年 4月~ 実務経験のため複数の税理士事務所で修業
    • 昭和62年 2月 事務所開業

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